第58話 秘書ヴィオラ

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第58話 秘書ヴィオラ





 ミラノの伝統的なビジネス街であるコルドゥージォ広場のすくそばに、HANAZAWA.COの所有する建造物があると類が教えてくれた。田村さんの運転する車は、今、まさにそこに向かっているのだろうと思う。
 さっきから、触れずに耳元で囁かれる甘い類の言葉の数々。とりあえず、世間一般、愛の言葉といわれるようなセリフを一巡りしたところで、目的の場所に着いた。

 どうぞ、と言われて、車のドアを開かれた。左足からヒールをカツンと小気味よくならして車の外に出る。そして、見上げた目の前の建造物に目を見張る。

「こっ、ここ?」

 その建物は、白大理石と彫刻や巨大な円柱で装飾された美しい作りをしていた。それは、まるで教会やお城のレベル。とても古いもので文化遺産にもなっているという。昔は、銀行として使われていたんだと、驚愕するあたしに、類が説明してくれた。

「行くよ。田村、牧野を頼む」

「かしこまりました」

 スーツ姿の類は、会社に入ったとたんに雰囲気がかわる。まさにできる男のオーラだ。さっきまでのベタベタが嘘のよう。8時ジャストにその重厚なドアを開けた。
 3人で、建物の中に入ると、エントランスで一人の女性が類を待っていた。類の姿を目にすると、ゆっくりと会釈をした。
 とてもきれいなオリエンタルな雰囲気を持った女性。パンツスーツを綺麗に着こなす高い身長。まるでモデルのようだ。
 類は、持っていた書類を無言で彼女に手渡し、あたしを呼んだ。

「牧野、こっちに来て。紹介するこっちでの俺の秘書 ヴィオラ・フォンターナ」

 美しい秘書さんが、あたしを見下ろし会釈をした。

「おはようございます。牧野様。ヴィオラと申します。お会いできて光栄です」

 彼女は、とても流暢に日本語を話し微笑んだ。

「こ、こちらこそ」

 ペコリとあたしは頭を下げた。
 類となにやらイタリア語で話す姿は、まさにキャリア秘書。類に媚びるでもなく、淡々と話をしている。内容は、まったくわからないが、仕事での類のパートナーという感じが伝わってくる。

 ブラウンのストレートロングヘアー、二重のクールな目元。瞳の色は類と同じ鳶色。クールビューティという言葉が、ぴったりと来る。けれど、冷たさを感じさせない。それは、彼女の人柄のせいだろうか。類の周りには、いつも綺麗な最高級の女性ばかりが集まる。静さん、鈴音さん、美沙さん、そして、ついに外国人のヴィオラさん。類の魅力は、国際レベルと言うことなんだろう。
 なのに、婚約者が、庶民のあたし。

「ま、いいのかな?」

 自虐ネタにするほど、あたしの心は強くない。けれども、今までのように嫉妬することはない。類を信じてるから。類が好きなのは、あたしだから。あたしだって、誰にも負けないぐらい類のことが好き。少しは、成長してるな。そんなことを考えていたら、牧野と呼びかけられた。

「会議が終わるまで、別室で待っていて。田村、牧野を頼んだよ」

 会議の時間も押し迫っていたようで、類は、田村さんにあたしを託すと美人の秘書さんとふたりで会議室へ向かった。

「牧野様、行きましょう」

 田村さんが、会社での類の部屋へとあたしを案内した。しらずに大きなため息をついてしまったようで、田村さんがにこやかに微笑んだ。

「気になりますか?彼女のこと」

 田村さんまで直球をなげるのね。

「気にならないわけではないけど、大丈夫です」

「成長されましたね。類様も牧野様も」

 ここイタリアでは、類には田村さんとヴィオラさんふたりの秘書が付いていると教えてくれた。類のスケジュール管理兼、雑務をこなしているのがヴィオラさんだという。
 プライベートなど、社外のことはすべて田村さんか管理していて、常に類のサポートをしていると。

 イタリアでの類の立場は、風当たりが強く、それはまるで試練のようだと田村さんは言う。あたしのいないところで、類は自分の道をしっかりと歩んでいた。
 寂しいのは、あたしだけじゃない。あたしも、類に恥じないような生き方をしたい。

 あたしは、何も持っていないけれど、この想いだけは消えることはない。類へのこの想いこそが、類が心底守りたいとおもっているものだと田村さんは言う。

 この部屋には、大きなモニターがあって、今行われている会議の様子が、流されている。
 田村さんは、あたしと話ながらもその様子をチェックしては、何やらメモをとっていた。いろんな意味で、できる男というのは、類だけじゃなく、目の前のこの類付きの秘書田村さんもそうなんだと思う。

 絶妙なタイミングで、入れたてのコーヒーが、置かれた。

「それを飲み終えるころには、会議もおわりそうです。もうすぐ類様が戻られますよ」

 ニコリと微笑んだ田村さんが、少しだけかっこよく思えた。




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2019/05/16 (Thu) 07:31 | EDIT | REPLY |   

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2019/05/16 (Thu) 08:08 | EDIT | REPLY |   

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2019/05/16 (Thu) 09:42 | EDIT | REPLY |   

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2019/05/16 (Thu) 16:43 | EDIT | REPLY |   
sirius

sirius  

悠*さんへ

こんばんは。美人秘書
う~ん。ないかなぁ~。あまり類とは絡ませたくないかなぁ。
いつもありがとう

2019/05/16 (Thu) 21:16 | EDIT | REPLY |   
sirius

sirius  

ず*さんへ

類のオンオフスイッチ。
このお話での、類君は、できる男です。
誰もが認めるできる男。そういうキャラかな。そして、田村さんもできる男^^
オリキャラの秘書さ。類の秘書は、田村さんか美人ときまっています^^
類は、興味ないでしょうけど^^

2019/05/16 (Thu) 21:20 | EDIT | REPLY |   
sirius

sirius  

お**さんへ

こんばんは。
美人秘書。気になりますか?
類君は、ちゃんとつくしのことを話しています。つくしちゃんにも紹介して。過去の失敗は繰り返さない。
何が起こるのか、想像と違うかもしれませんね。コメありがとう。
そうそう、リク日曜にあたりに予定します^^遅れたらごめんなさいね。

2019/05/16 (Thu) 21:27 | EDIT | REPLY |   
sirius

sirius  

l***さんへ

類君のスーツ姿かっこいいでしょうね。F4は、何着てもいけてますよね。
田村さん、ここでは、40歳後半位の設定。
類が生まれたときに、23歳ぐらいとかそんな感じの年の差。
原作でも中年男性っぽく書かれてましたよね。
ヴィオラは、できる女の設定。美沙と似ていますが、彼女のような悪だくみはしないですよ^^たぶんね。
つくしは、この2部で、類よりもずっと強いと思います。愛されるってすごいですね。コメありがとう

2019/05/16 (Thu) 21:42 | EDIT | REPLY |   

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